中国人と上手につきあうコツ

文化を理解する

理解するための努力をする

ビジネスを成功させるためには、円滑にコミュニケーションをとれる能力が必要不可欠です。もちろん、これは中国でのビジネスにも当てはまります。ですが、日本人同士でコミュニケーションをとるよりも、当然ですが、中国人とコミュニケーションをとることのほうが難しくなります。それは、文化の違いから言葉以外の点でも理解しにくいことが起こるからです。同じアジア人でありながらも、日本人と中国人は文化の違いから衝突してしまうことも往々にしてあります。そこで肝心なことは、日本での常識にとらわれず、中国の文化を理解することです。

ここでは、一般的に言われる中国人と日本人との関係で理解に苦しむ事柄をいくつかご紹介します。その疑問を解くことで理解の助けにしていただければ幸いです。

中国人にとって仕事は腰掛にすぎない?

日本企業が中国に進出して、その現地法人を日本的なやり方で管理しようとすると、必ずと言っていいほどうまくいきません。日本では常識と思われることでも、中国人にとっては必ずしも常識ではないからです。そんななかでよく言われることが、「中国人は今より少しでも給料が良いところに職があれば、すぐにそちらに飛びついて会社を簡単にやめてしまう」というものです。そもそも、中国人は会社に自分の人生を預けようなどとは考えません。純粋に自分がこの会社でどれだけスキルを吸収できるかを常に考えています。その結果、少しでも今の会社より、給料が良かったり、技術的に優れたものを吸収できたりするような会社が別にあれば、当然、転職してしまいます。

このため、日本の企業が日本国内で行っているのと同じように人材育成に時間と労力を使って彼らのスキルアップのための投資をすると、後で必ずと言っていいほど「裏切られた!」と感じることになってしまいます。

これは、時の支配者によって民衆の処遇が180度変わってしまうようなことが何度も繰り返されたという歴史的背景や、急激な市場経済の導入によって生じた不公平な社会環境の厳しさにも起因しているかもしれません。ですので、この現象を日本企業の側が何とか解決しようと思ってできるものではないかもしれません。したがって、当面はこういうものだと理解して、現時点で最善と思われる方法をとっていくことが良いのではないでしょうか。

労務管理は「アメとムチ」の制度作りが必要

以上のような現実を前に最善の方法として考えられることは、信賞必罰的な制度によって対応していくことです。これは中国に限った話ではなく、日本国内においてもだんだんそのような形になりつつあります。日本でも構造的な不況が長引き、終身雇用や退職金などを従業員に約束しきれない企業も多くなってきています。そうなると「会社に裏切られた」と考える人も出てくるでしょう。人生の後ろのほうで報われるような安心感を売る制度ではなく、自分の努力と報酬が直接的にリンクするような分かりやすい制度の確立が必要になってきているのかもしれません。逆に言うと、中国人はそういう制度のなかでの業績不振による解雇を仕方のないこととして受け入れるケースも多いようです。最初から会社に全人生を預けているわけではなく、単に会社と従業員は法律上の雇用関係でしかないと考えているのです。

しかし、これでは日本企業の得意技である、長期的な視点に立って時間のかかる地道な基礎研究に取り組むという体制が作りにくくなってしまいます。そのため、すべての場合において完璧な方法かというと疑問が残りますが。これについては今後、深く考えていく必要がありそうです。

品質についての考え方

日本の特にサービス業では常識である「顧客第一主義」についても中国ではなかなか理解されず、頭を抱えてしまう日本企業が多くあります。しかし、この点については会社の存続にかかわることですので、先ほどの問題のように中国人を理解することで何とかしのげるというものではありません。これについては、何としても教育によって中国人の従業員に理解してもらわなければならないことです。しかし、現実にはその考え方がすんなりと受け入れられることは稀です。これは中国の長い歴史が原因というわけではなく、第二次世界大戦後、共産党支配下の国有企業がすべての経済を担っていたため、顧客満足が経済の基本ではなかったためだと考えられます。ですから、日本企業が彼らに対し「自分たちの会社の商品やサービスによってお客様に喜んでいただき、再び購入してもらうことで自分たちの生活が初めて成り立つ」という考え方を何度も伝え、中国人従業員に浸透させることが重要でしょう。

マスコミで言われるほど反日ではない?

日本のマスコミの報道などにより、中国国内では反日宣伝・反日感情が蔓延しているというイメージが強くあります。実際に中国政府がそのような政策をとっているという事実もあります。しかしながら、個人レベルではよほどのことがない限り、そこまでの感情を日本に対して抱いている中国人はいないでしょう。特に世代が若くなればなるほど、その傾向は顕著です。むしろ、日本に対して好感や憧れすら持っている人も少なくありません。

その反面、日本人は先ほど言ったようなイメージに固執し、中国人と付き合う上で、必要以上に違和感を覚える人が多いように思われます。中国人は、そもそも中国自体が巨大な国であるため、他者に対する違和感には日本人に比べればずっと慣れています。他人に対して常に疑いは持ちながらも、不都合がなければ誰とでも友人になれるという性格の人が多いのです。 むしろこの課題は、中国人側ではなく日本人の側にあるものだと思われます。

「信用」「賄賂」中国の理解

中国人は、日本人に比べ人を信用しません。日本では社会問題になっている「振り込め詐欺」などは、中国では決して起こりえない犯罪だと言えます。中国人は「初対面の人にも失礼がないようにふるまう」という考え方が非常に薄いのです。そのため、中国ではビジネスに限らず、他人を絶対に信用せず何事においても親戚や友人の存在によって信用の担保とするのです。

このことから、あらゆることに友人や友人の紹介によって「話を通す」という作業が必要になってきます。また、中国の悪名高い賄賂社会も、いったん賄賂によって「話を通し」、「友人」になってから物事を進めていくという考え方に則っていると捉えられなくもないのです。
そもそも、「相手を信用しない」という中国人の特徴は、長い歴史のなかの中国の社会制度や社会環境によって作りあげられたものです。

そうであるなら、社会の制度が変わり、環境が変わりさえすれば、そのような考え方にも変化が起こってくるかもしれません。現在の中国では「信用が経済の基本」という資本主義社会では当然のこととされる考え方が、完全にはまだ整備され切っていない段階です。そのため、日本企業としては中国人のそういった性格を十分に理解し把握した上で、信用すべき事柄は信用して、彼らの信頼を少しずつ積み重ねていく必要があるのではないでしょうか。

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